〈11月〉

遺言の献体かなし菊の花
俳句のコメント

 「遺言の献体かなし菊の花」

 菊祭りのはなやかな季節。70才を過ぎて体が思うようにならなくなって来たと感じている。

 最近、友人との集まりには専門の話題のあとには、いつも病気・療養・お墓・散骨などが決まって話題になる。

 さて、身近に親しくお付き合いしている親戚のご主人が肺がんになった知らせを受けて大変驚いた。ご家族の懸命の治療にも関わらず、わずか3ヶ月でこの世を去ってしまった。ご家族の悲しみは如何ばかりと思い呆然としました。私と同年齢であったので、大変悲しく残念なことでした。

 ご本人は穏やかで読書とお酒が好きでした。お元気な時からご家族に「献体」の意思を話されていたようで、ご家族は遺言により、献体を覚悟して悲しみの中で大学病院にご遺体を託しました。

 ご主人のご遺体がお帰りになる日をじっと堪えておられ、3年目の今秋、ようやくお骨になってかえってきました。
 法要、納骨がしめやかに営まれ、ご家族は遺言を果たしてほっとすると共に、悲しみを新たにされたことと推察しています。

 私は家族に出来るだけ迷惑をかけないように、自らは努力し静かにこの世を去りたいと考えている今日この頃である。